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ユーザーリポート

Vol.4 埼玉大学様(さいたま市)

「蛋白質でできた蛍光分子センサーによるカルシウムイメージング研究の現場で低温インキュベーターを活用。」

埼玉大学 総合研究機構 脳科学融合研究センター
埼玉大学 総合研究機構 脳科学融合研究センター
所在地:
埼玉県さいたま市桜区下大久保255
TEL:
048-858-9283
研究内容:
生命科学、理学及び工学的見地から脳機能の解明と応用に関する研究
URL:
http://www.saitama-u.ac.jp/iron/hP-kenkyo/shinkou/nou.htm

先端的な脳科学研究の現場で評価される低温インキュベーター

2009年、創立60周年を迎えた埼玉大学。「知の府としての普遍的な役割を果たす」、「現代が抱える課題の解決を図る」、「国際社会に貢献する」という3つの基本方針を掲げ、教育、研究、社会貢献の各面で新たな営みをスタートさせた。研究面では同年、「脳科学融合研究センター」と「環境科学研究センター」を設立。独立行政法人理化学研究所など、埼玉県内の有力な研究機関と連携しながら、世界最先端の課題に取り組んでいる。

「脳科学融合研究センターでは、脳機能解析部門(脳の働きの解明)、脳発生発達解析部門(脳のでき方や病気の解明)、脳科学研究新技術開発部門(技術の開発)の3部門を組織し、学内外の研究者との連携を強化した学術研究や、企業との共同研究により、脳科学分野の新たな可能性を追求しています」。そう語るのは、設立時からセンター長を務める中井淳一教授。脳科学研究において先導的な役割を果たす理化学研究所から移籍し、両者の連携を取り持ちながら研究を進めている。

研究テーマは、神経活動の測定。自ら開発したクラゲの蛍光蛋白質(Green Fluorescent Protein, GFP)でできた蛍光分子(カルシウム)センサーを用い、イメージング(試料の情報を光学的な方法で測定して画像化・視覚化すること)の向上に務めている。研究にはモデル生物が欠かせないが、モデル生物「線虫」の保管に使われているのは福島工業の低温インキュベーターだ。昨年12月に1台目が導入され、翌月には2台目が導入。中井教授の評価の高さが伺える。

※高精度温度制御モデル FMU-403I-BCが導入されています。

安定した温度管理が評価され、昨年12月に1台目、翌月には2台目が導入された低温インキュベーター。

研究センターが開発したカルシウムセンサー分子の模式図(論文図 Wang, Q. et al. Structure 16, 1817-1827 (2008)を改変)

操作パネルは、「シンプルでわかりやすい」と、研究員の方たちにも好評をいただいている。

写真は右から中井教授、弊社FMS事業部橋爪社員。

生体内で細胞機能を測定する蛋白質でできた蛍光分子センサー

生物の多様な機能は、生理活性物質(微量で生き物の生理や行動に特有な作用を示し、身体の働きを調節する役割をもった物質のことで、ビタミンやミネラル、核酸、酵素などが代表的)を介して維持されている。機能を理解し、医学や産業に応用していくためには、生理活性物質の濃度測定が必要だ。血液検査や尿検査などはサンプリングによる測定。一方、MRIやPET(体内の様子を画像化して行う検査) のようにリアルタイムに生体を測定する方法は、イメージングと呼ばれる。

「イメージングの世界で、今最も多く利用されているのは蛍光カルシウムセンサーによる測定です。私たちが開発したセンサーも、世界中で神経活動のイメージングを行う人たちの多くに利用されています」。

蛍光カルシウムセンサーは、主に蛋白質でできたGFPまたはGFPと類似した構造を持つ蛍光蛋白質からつくられる。GFPは、オワンクラゲからクローン化された蛍光蛋白質。現在、生物学の分野では、レポーター遺伝子(遺伝子組換えなどを行ったときに、導入した遺伝子が発現しているかどうかを確認する為に用いられる遺伝子)として多用されているが、2008年、この蛋白質を発見した下村博士に、ノーベル化学賞が授与されたことは記憶に新しい。

「蛍光カルシウムセンサーは、標準的な蛍光顕微鏡やレーザー顕微鏡で容易に観察でき、蛋白質の設計図である遺伝子を細胞に導入することにより、生体内でのカルシウムの濃度変化を感知できます」。細胞質内のCa2+は、筋肉の収縮、ホルモンや神経伝達物質の分泌、神経細胞の可塑的な変化(記憶に関係すると考えられる変化)など、生体内のほとんどすべての生命現象に関与しており、蛍光カルシウムセンサーは、細胞機能を広くモニターするうえで、非常に有効な手段とされている。

研究の要となるモデル生物を安定的な温度で管理

蛍光カルシウムセンサーは、培養細胞や生きているモデル生物の個体に発現させることができる。遺伝子を細胞や動物に組込むと、細胞特異的または組織特異的に(特定の細胞、たとえば神経細胞や筋肉、心臓の細胞に限定して)センサー蛋白質を発現させ、カルシウムの画像化や濃度変化の測定ができる。モデル生物としてマウス、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、線虫が主に使われるが、中井教授は現在、特に線虫での実験に力を入れている。

「体が透明で全身を画像化でき、クリアな蛍光シグナルを検出できる線虫は、有効なツール。3日で成虫になり、体長が1ミリしかないので、シャーレでたくさん飼うこともできます。しかも、こんなに小さいのに、7割の遺伝子が人間と同じなんですよ」。

研究室では100万ゲノム(ゲノム=生物が生きていくために必要な遺伝情報の1組のこと)、数にすると数千万匹の線虫を保有し、日夜研究を続けている。飼育に利用されているのは低温インキュベーター。線虫にとっての適温は10℃〜20℃で、12℃以下では動かなくなったり死んでしまったり、25℃以上では精子ができなくなるという。安定的な温度管理が重要なモデル生物の飼育に、「最適」と選ばれたのは福島工業の製品だった。

「他社と温度の安定性を比較した際に、福島工業さんの温度データが最も優れていたので決めました。大容量でたくさん飼育できるのも魅力です。扉に磁石が付いていてしっかり閉まるのもいいですね。研究員たちからも、『操作パネルがシンプルでわかりやすい』と好評です。営業の方は“当社は取扱説明書を読まなくてもわかるがモットーです”と言っていましたが、そのとおり。余計なストレスを感じず研究に集中できるのはありがたいです」。

「体が透明で全身を画像化でき、クリアな蛍光シグナルを検出できる線虫は、有効なツール」と語る中井教授と研究員のみなさん

今後の取り組みモデル生物飼育設備に期待。
移植、再生医療分野へ貢献していきたい。

今後は線虫だけでなく、ゼブラフィッシュやマウスを使った研究にも力を入れていくつもりです。福島工業さんには、線虫用のインキュベーターをもう1台お願いしようと思っていますが、ゼブラフィッシュの飼育にも検討したいですね。

一方、蛍光分子センサーだけでなく、測定技術の向上にも力を入れています。蛍光分子センサーが良くても、見えなければ意味がないですから。現在メーカーと共同でレーザー顕微鏡の開発を進めています。数年後には驚くような世界が見えるようになるはずです。センサーに関しては、おかげさまで世界中から分譲依頼が来ている状況、また移植、再生医療分野の技術発展のために貢献していきたいです。

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